今回は、『川の向こうのあの人に。』『…三つ星の記憶を集めて』など多くの印象的なワールドを制作するワールドクリエイター・みっつ (Mittsu)さんにワールド制作する時に考えていることや、その魅力・嬉しさなどを綴ってもらいました。
自己紹介

こんにちは。みっつです。
cluster では、ワールドやアイテム、アクセサリーを制作したり、イベントを観たり、時には自分もイベントに出演したりその運営に関わったりして過ごしています。
そんな cluster 生活の中でも、ワールドの制作は自分の中でどこか特別な位置づけなような気がしています。
ワールド制作時に毎度お世話になっている Cluster Creators Guide にて記事執筆の機会をいただけたということで、ここでは、みっつが cluster ワールドをつくる過程でどういう事を考えているのか、自分自身も今一度振り返るつもりで、書き綴ってみたいと思います。
よろしければお付き合いください!
誰かが巡る場所を作ること
皆さん、ワールド探訪してますか?
楽しいですよね!
みっつも、フレンドづてやSNSで知ってメモしておいた気になるワールドを消化したり、企画やコンテストで投稿された場所を順番に巡ったり、時には気分に合わせてワールド検索を行ったり、気の向くままに様々な世界を旅して過ごしています。
当然のことですが、ワールドは誰かが何かしらの意図を持って作ったものですよね。少なくとも今のところは。
ワールドを訪れることは、制作者のものの見方や考え方、心のあり方に触れることでもあると思っています。
その人がどういうことを表現したいと思っているのか、どのような物を大切にしているのか、などと想像しながら、作られた空間を歩き回って過ごす時間はワールド巡りの一つの醍醐味だと思っています。

自分自身がそういう楽しみ方をしているということもあって、みっつがワールドを作るときは、完成した空間を歩き回っている自分自身や他の誰かのことを想像しながら作業を行っています。
自分自身を含めた、バーチャル世界に暮らす人たちのワールド巡りの一部になるのだ、という意識を持っていたいと思います。
訪れたのは一度きりだけど、なんだか忘れられない。
そんな「記憶にこびりつく」ような場所や体験をつくることができたら幸せだなと思いながら制作しています。
作るときに特に気にしていること
じゃあ自分は具体的にどんなことを考えているんだろう、と思ったので、自分の制作時の気持ちを思い出しながらいくつかリストアップしてみました。
見せたいもの、感じて欲しいことを明確なコンセプトに
もしも “せっかく作ったワールドのことを記憶に残してほしい” と思うのであれば、思い出しやすいようなものを作ることが大切なのかなと思います。
これは多くの人が考えていることなのかなと思いますが「そのワールドで何を見てほしいのか」「そのワールドで何を感じてほしいのか」「そこで過ごしたことをどんな記憶にしてほしいのか」一文で説明できるくらいシンプルなコンセプトを考えるのが大事だと思います。
「めっちゃ綺麗な朝焼けを山の山頂から見る!」
「古風な喫茶店のようにのんびり過ごせる」
「超でっかい猫が水平線からせりあがってくる!」
「滅んだ地球の瓦礫の中でロボットが2体、将棋を打ち続けている」
そんな感じで、テーマはなんでもいいと思います。
また、これは自分が制作中に迷子にならないようにするという意味でも大事です。
その時に自分が作りたいと思っている、まだフワッとしているものをシンプルなコンセプトとしてまとめる作業は重要です。


自分の心が動くか、を一番大事に
考えたコンセプトに対して、それをどのようにして見せるかという話です。
完成形を想像して、ちゃんと自分の心が動くかを最重要視しています。
願わくは、作る前に想像しただけで自分でちょっと笑っちゃうとか、ウルっとしてしまうとか、気分が落ち込んじゃうくらいのものを目指したいと思っています。
コンセプトが「めっちゃ綺麗な朝焼けを山の山頂から見る!」だったとすると、
「そこはどういういわれのある山なんだろう」というように設定を考えてみたり、
「夕焼けを見るまでに、山を登ったり山小屋に泊まったりした方がいいだろうか」と見てもらうまでの過程を考えてみたり、
「現実の朝焼けと違ってバーチャルならではの特別な要素って考えられないかな」と発想を飛躍させようとしてみたり、
そんな作業がこの段階なのかなと思います。
これは自分でも見てみたい!自分の心が動きそう!!
と思えてから制作に入るようにしています。
その景色やシーンを自分が味わうことを制作のモチベーションにするという意味でも、かなり重要だと思います。

小さいことを惜しみなく盛り込む
その世界に入り込む助けになる要素は、思いつく限り取り入れていきたいと思っています。
小鳥のさえずりや波の音といった環境音や、アイテムを使ったときの音などはできるだけ自分の作りたいワールドの空気と合わせたいと思っています。
時に非現実感につながってしまうこともあるのですが、雰囲気を演出するという点で音楽の重要性も高いと思っています。BGMのあるなしで、空気感が一変することも多いです。
音以外にも、入室時の視界は特に気にしています。
何度も繰り返して微調整して納得のいくファーストビューを探しますし、暗転からフェードして明るくなっていくようなギミックを用意することもあります。どんなに小さいことでも、まず取り入れてみてから判断するようにしています。
普段ワールドを巡っている中や、映画を見ていたり、ゲームをしたりする中で「こういう要素、自分が作るものの中ではあまり気にしたことがなかったけど、大事かもしれない」と感じるようなセンサを働かせて過ごすのは、アイデアを探すためのコツかもしれません。

テキストをどう使用するか
みっつ自身が物語要素のあるワールド作りに楽しさを感じているのもあって、ワールドの中で使うテキストの分量については普段よく悩んでいます。
あまりに使用量が多いと説明的になりすぎる気がしますし、排除しすぎると謎ワールドになってしまうので難しいと感じています。
その表示方法についても試行錯誤中です。
画面上にUIとして表示するのか、キャラクターや物体の上部に表示するのか。フルボイスにするのか、喋っている風の効果音を鳴らすのかなど。
台詞1つとってみても、見せ方や聞かせ方ひとつで印象がガラッと変わります。
一人だけで見ながら体験する形式のものなのか、みんなで一緒に鑑賞するものなのか、最適解はその時々でまちまちなんだろうなという印象です。これからも探索し続けようと思っています。

嬉しいこと
みっつは、ここまでに書いたようなことを意識しながらワールドを制作しています。
そんな中で嬉しいことをいくつか紹介します。
自分が想像した世界や1シーンに入り込めること
頭の中で思い描いていた場面に、世界で一番はじめに入り込むことができる!
これは最高の体験です。
ワールドを作っているからこそできることだと思います。
自分が見てみたかった景色を満足いくまで堪能できて、そこで過ごした時間を自分の思い出にできることが、何より嬉しい事だと思います。特にVR機器で体験した時の嬉しさは一入です。

想像以上に綺麗でした
他の人が過ごしている様子を眺められること
制作中、「もしここにこんな人が来たら、どう思うかな」とか「ここで人が集まって立ち話していたら雰囲気よさそうだな」とか、ワールドを訪れた人も込みで完成形を想像することがあります。
そのように思い描いていたような楽しみ方をしている人を実際に見かけることができると、とても嬉しい気持ちになります。
あるいは、自分が想像もしないような遊び方やワールドの味わい方をしている人に遭遇した時も、何とも言えない喜びを感じることができるものです。

自分と同じような感覚の人が見つかること
時に、非常にありがたいことに、作ったワールドについて感想の言葉をいただくこともあります。
自分が作るときに考えていたことが伝わったことだったり、さらにはその思いを発展させて色々なことを考えてくださった内容だったり、そんな風に誰か別の方が、その人自身の言葉でワールドについて話してくれることは、何にも代えがたい喜ばしい体験だと思っています。この場を借りて、ありがとうございます。
自分がひとりで作ったものを通して、自分と同じように物を見ていたり、似たような経験を持っていたりする人と出会うことができるというのは不思議だなと感じていますし「こういうのあるから、やめられないなぁ」と思っています。
もし今後みなさんが、誰かが作ったワールドを訪れてなにか強い思いを抱いたような時があったら、ぜひそのワールドの制作者さんに伝えてみることをおすすめします。きっと色々なことをわかち合うことができると思います。

いつもありがとうございます。
終わりに
ここまで読んでくださってありがとうございました。
少し長くなってしまいましたが、色々なことを振り返れてとてもいい機会でした!
みっつはこれからも試行錯誤しながらワールドをつくっていきます。
できあがったものをお見かけしたら、訪れてくださったら嬉しいです。
この記事を読んで cluster ワールドを訪れたときにいつもとちょっと違うことを考えてみたり、自分でもワールドを作ってみたい!と興味を持ったりするきっかけになったらいいなと思っています。
また、もしも何かみっつでお助けできそうなことがあったら、いつでもお声掛けください。
おまけ:おすすめツール
本当は「みっつ版ワールド制作の流れ」のような項目を書こうかなと思ったのですが、端折ってしまったので、おすすめのツールという形でいくつか紹介したいものをおまけとして!
資料集めはPinterest
ビジュアル面での資料集めはPinterestを使っています。
作るワールドごとにボードを作っています。
雰囲気やキービジュアル、小物やサムネイルの構図まで、制作に入る前に満足するまで漁りまくってごっちゃ煮してます。

ストーリーやテキストの整理はNola
これはあまり使用している人がいないかもしれないですが、おすすめです。
「小説家専用のエディタツール」としてリリースされているNolaというものです。
ストーリーやイベント、テキスト面での整理に使うことが多いですが、条件分岐の変数をどうするかなど、仕様に関わる部分を項目ごとにまとめておくために使うこともあります。
こちらも作るワールドごとに分けて管理できるし、何よりスマホとPCで同期できるのでとても使い勝手がいいです。

雑多なメモはGoogle Keep
特に作るものがない時にフッと思いついたことなどは Google Keep というメモアプリを使っています。
これも端末間で(というかアカウント毎に)同期できるのでオススメです。

色々作ったりはパワポ
最終版はPhotoshopやCanvaなど使うこともありますが、画像や図形、テキストUIの作成、サムネイルまで、初版はだいたいパワポで作ってます。
ソフトの起動や処理が軽いのと、ペンタブで簡単なメモ書きくらいは加筆できちゃうとか、なんだかんだ必要な機能がそろっているのでいまだに離れられていません。
実はテキストや図形などをSVG形式で書きだすこともできて、モデリングにも役立っています。
