ワールド制作が表現できる世界を広げてくれた。SF(すこし不思議)ワールドをつくり続ける熊猫土竜さん

cluster公式では毎月テーマに沿ってワールドを投稿してもらい、賞を授与する「お題企画」を開催しています。1月のお題企画テーマは「四畳半のメタバース」。

限られたスペースでの表現が求められた今回のお題企画で大賞を受賞したのは「火星第46コロニー人類史ミュージアム」というワールドです。
27×27mの空間の中で恐竜の時代から火星へ降り立つまでの人類の歴史を聞きやすいナレーションと共にぎゅっと体験できるミュージアム。

今回はワールド制作者である熊猫土竜さんに受賞ワールドについてお話を伺いました。
まだこのワールドに行ったことがない方はぜひ行ってみてから読んでみてください!

「火星第46コロニー人類史ミュージアム」で熊猫土竜さんにお話を伺いました

Unity初心者からスタートしたワールドづくり

──普段はどういうことをされていますか?

普段は自分のワールドにいて、来てくれた人と雑談していることが多いです(ワールドにいるけど裏でUnityを触っていたりもします)。あとはワールド巡りですね。

一番好きなのはフルトラで踊ることです。週末はclusterで色々なDJイベントがあるので、そこで踊っていたりします。あ、それからスクワットと週末のラジオ体操(笑)

──ワールドづくりはいつ頃からはじめられたんですか?

2020年11月に最初のワールドをアップしました。

それまでUnityもblenderもまったく触ったことはありませんでした。最初は自分が現実で今まで撮ってきた写真の展示会をやりたくて、その会場をつくるためにUnityをはじめて触ってclusterにアップロードしました。

──Unityもblenderも未経験の状態からclusterでワールドをつくりはじめたんですね…

最初にアップロードしたワールド「熊猫土竜の世界旅写真展

意外な組み合わせによってSF(すこし不思議)ワールドをつくる

──今回のワールドは「火星に建つ人類史ミュージアム」ですが、このアイデアはどういうところから発想されたんですか

もともとはお題企画に関係なく自分が今までつくってきたワールドをミニチュアで俯瞰的に見れるワールドがあったら面白いかなと考えていたんです。

今回のテーマ「四畳半のメタバース」で、高さ制限として27mというのがあったので、そのアイデアを展開して、上下に自分のワールドのミニチュアを並べてみたらどうかなというところから考え始めました。

ただ並べただけだとあまり面白くないので「恐竜の時代から始まって現代、火星まで行く」という物語をつくって、地球の歴史というか人類の歴史に沿って展示を見れたら面白いかなと思いアイデアを詰めていきました。

「火星第46コロニー人類史ミュージアム」では椅子に座ったままで人類史を追うことができる仕掛けが用意されている

──熊猫土竜さんのワールドは「火星」がテーマになることが多いですよね。

そうですね。「火星」がテーマになった最初のワールドはcluster大加速祭の時のものです。

その時に求められたテーマが「未来」だったのですが、未来がテーマなのに逆に古臭いものがあったら面白いかなと思い、「古臭いものだけど未来感がある」という発想を「違う星に移住した後の未来と、未来とはまったく真逆な存在である銭湯を掛け合わせる」というアイデアに落とし込んでつくったのが火星第38コロニー銭湯「さくら」です。

そこからワールドの世界観をリンクさせて、火星のワールドをいくつかつくってきましたね。

火星第38コロニー銭湯「さくら」

──なるほど。今回は「自分が今までつくってきたワールドをミニチュアで俯瞰的に見れるワールド」から発想されているとのことですが、普段ワールドをつくるときのアイデアはどういうところから発想するんですか?

何かの組み合わせが多いですね。「こんな組み合わせは今まで見たことないよな」というところから発想しています。

子どもの頃から漫画家の藤子不二雄先生が大好きで、作品から影響を受けているなと思います。どのワールドでも「SF(少し不思議)」要素があって、バーチャルなんだけどあまり現実から離れたものではない「リアル×何か」でSFなワールドをつくっているのではないかと思っています。

火星第38コロニー銭湯「さくら」

「自分がいなくても楽しめる」ワールドにするためのこだわり──ナレーションと展示物のクオリティ

──今回のワールドでこだわったポイントはどういう部分ですか?

今回は「自分がいなくても楽しめる」ワールドになるようにこだわりました。

ひとつは、説明を読まなくても楽しめるためのナレーションです。
clusterではナレーションを聴きながら巡るワールドはあまり見ないと思っていて、ナレーションを入れるのは面白いかなと思って、取り入れました。
ナレーションもただのナレーションではなくて物語性があるような構成にしています。

──なるほど。ナレーションがあると一人でも展示を見るのが楽しめました。ナレーションを担当されたのはclusterで色々活動されているおはよう真夜中さんでしたが、どういう経緯で依頼されたのでしょうか?

最初は自分で録ろうかなと思っていたんですけど、おはよう真夜中さんのPVつくったりclusterのライブ配信を僕が手伝ったり色々やらせていただいている中で、今回のワールドに声質があっているなと思ってお願いしたのが経緯ですね。

──clusterで一緒に活動をしたのがきっかけだったんですね。

そうですね。ただお願いした段階では歌しか聞いたことなかったのですが、できたものを実際に聞いた時は「想定以上のものがきたな!」と思いました。

──確かにすごい聞きやすいナレーションでした。他にもこだわったポイントはありますか?

今回のワールドは8つのワールドのミニチュア展示があるんですけど、1個1個の展示自体もひとつのワールドをつくるくらい空やライティングにこだわっています。ワールド全体だけでなく、1個1個の展示だけでも物語が成立するようにしています。

「火星第46コロニー人類史ミュージアム」恐竜時代の展示

──「歴史を追う」というアイデアだけでなく、ひとつひとつの展示自体もこだわっているんですね。

現実の歴史もさまざまな物語が積み重なってできているので、このワールドでも1個1個の展示物の中に物語があって、さらにその積み重ねを見て一つの「歴史」という物語が追えるという構成にしたかったんですよね。

ワールド制作する度に経験値を積み上げていく

──なるほど。そこまでディテールにこだわられているとのことですが、今回のワールド制作で一番苦労したポイントはありますか?

今回は制作自体にそこまで苦労はなかったですね。

ただ、四畳半の中でどこまで表現できるかというところでスケール感は悩みました。小さすぎてもわかりづらいし、大きすぎても物語が伝わりづらいので。1個1個の展示は実はよく見るとスケール感がそれぞれ違うんです。そこに関してはこだわりでもあり苦労でもありました。

「火星第46コロニー人類史ミュージアム」それぞれの展示のスケールは最適なものでつくられている

──どうやってつくるかに関しては今までのワールド制作の経験が活きていたということですね。

そうですね。自分はワールドをつくる度にただつくるだけではなくて、何か1個新しい要素を入れるようにしているんですけど、今回はTimelineをはじめて使ってみたくらいで、あとは基本的には今までの積み重ねでできたと思います。

──普段のワールド制作だと、どういうところで苦労しますか?

ワールドをつくっていく中で徐々にスキルを身につけているのと、今言ったように毎回新しいことにチャレンジしているので、新しい技術を覚えたり試行錯誤するのに時間かかりますね。

当然失敗もたくさんするので、何度も何度も非公開でアップしてはダメでとやってるとワールドアップロードもすぐ終わるわけではないので、そこで時間を使いますね。

──今回制作の時に参考にしたものはありましたか?

今回はじめて触ったTimelineはCluster Creators Guideの記事を参考にしてつくりました。

ワールドの世界観のリファレンスは、やはり先ほどお話ししたように根底に藤子不二雄先生の世界の影響があります。ただ、ワールドをつくっている時はそのことはあまり意識していなくて、後から考えてみるとインスピレーションを受けているなと感じますね。


自分がつくるワールドは恐竜であったりアラビアンであったり、今回のワールドの展示の仕方も今から考えてみるとドラえもんぽいなと思います(笑)

──昔見ていたものからの影響はワールドをつくる時には少なからず影響が出てきたりがあるということですね。

あると思います。自分は趣味でやっているだけで、クリエイターとかアーティストだと思っていないんですけど、何か表現する時には自分がどれくらいのインプットをしてきたかはアウトプットの引き出しになっているかなと思います。

色々なワールドからインスピレーションを得る

──ありがとうございます。ワールドをつくられている方の思考を色々伺えて楽しかったです。最後に最近clusterでおすすめのワールドはありますか?

おすすめはいっぱいありますね。自分でワールドをつくる時も色々なワールドからインスピレーションを得ています。

自分は色々な人たちのワールドをリスペクトしていて。特に自分より先につくりはじめた人たち、clusterの先輩たちの背中を追っかけていると思っています。世界観でいえばhkさんが好きで、ああいう綺麗な世界観をいつかつくりたいなというのも憧れとしてありますね。技術的なところも色々なワールドから勉強させてもらっています。

Dream At Summer Night」hk

今回の「四畳半のメタバース」で言えば、色々回っている中でみっつさんの「4.5n」のワールドはロボットアバターと人がいて現実とclusterの関係性を表している世界観がいいなと思いました。

4.5n」みっつ

──みっつさんのはリアルとバーチャルの関係性が端的にあらわれていて、とても良いワールドでしたね。受賞ワールド以外にも素敵なワールドはたくさんあるので、まだ回ってない方はぜひ回ってみてください。
今日はありがとうございました!

まだ「火星第46コロニー人類史ミュージアム」を訪れたことがない方は下記リンクからぜひ遊びに行ってみてください!


cluster公式では毎月テーマに沿ってワールドを投稿してもらい、賞を授与する「お題企画」を開催しています。
2月のお題企画は「大にゃんこ祭」!
誰でも気軽に参加できます。皆さんのワールドを体験できるのを楽しみにしています。ぜひご応募ください!

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