クラスターCGデザイナーインターンの荊棘そら(いばらそら)さんによる、モデリングする際のプロセスを紹介した記事を転載します。モデリングの手順はさまざまなですが、一例として参考にしてみてください!元記事はこちら。
自己紹介
クラスター株式会社でCG制作インターンをしている荊棘そら(いばらそら)です。主にワールドクラフトの公式アイテム制作を行っています。
僕は、高専の研究室で3DCADに触れたことがきっかけで3DCGを始めました。現在は京都芸術大学でイラストについて勉強している大学生(2回目)兼コメ農家です🚜💨

タバコは残念ながら吸ったことはありませんが、農作業中にお父さんのメビウス10mgを受動喫煙しているヘビースモーカーです🚬
はじめに
この記事では、僕がクラスター株式会社にインターンとして入社するまでに行ってきた「力こそパワーな3DCGモデリング」について、実際に制作した「手水舎」を参考に話したいと思います。
僕自身、まだ3DCGを始めて2年ほどしか経っておらず、初心者の域を出ていないと思います。そのため、備忘録的な意味合いも込めて書いていきたいと思います。

①作るものを決める
Blenderのチュートリアルを終えて一番最初につまずくのはここだと思います。僕もここでつまずきました。Twitterを見ているとチュートリアルを一通りこなしたら3DCG自体をやめてしまう、みたいな方が結構います。チュートリアルは動画通りに進めていけば完成するので、それで満足してしまうのはとても理解できることです。
しかし、もしチュートリアル以外のものを作りたいと思っているのであれば、まずは自分の作りたいものを作るのが一番でしょう。身の回りにある作りやすそうなものでもいいですし、僕みたいに近所の神社にある手水舎なんてものを作ってもいいかもしれません。
Twitterではワンモデといって1時間でモデリングを行う企画をやっていたりもするので、困ったらそういった企画に参加してみるのもいいかもしれませんね。

毎日参加している猛者もいます。
②資料集め
作りたいものが決まったら次は資料集めに入ります。3DCGに限らず作品作りに一番大切なのは「資料集め」だと考えています。
僕はまだ未熟なのでどれだけ日常的に見ているものであっても、しっかりと観察をしていないものをいきなり作ることはできません。そのため、作品を作る際には必ず資料集めを行っています。
資料には大きく分けて4つのタイプがあると考えています。
- シルエットのわかる資料
- ディティールのわかる資料
- 世界観のわかる資料
- 構図のわかる資料
シルエットのわかる資料
1つ目は、シルエットのわかる資料です。人はシルエットだけでかなりの推測を行うことができます。シルエットクイズがいい例ですね。
また、遠景の背景がほとんどシルエットのみの場合もあります。これは情報量の整理もかかわってきますが、シルエットだけで遠景がビルだとわかるようなことを指しています。
つまり、シルエットさえはっきりしていれば、人はオブジェクトを推測して認識してくれるということです。
ディティールのわかる資料
しかし、シルエットだけがはっきりしていて細かい部分がおろそかになってしまっては、寄ったときのクオリティが下がってしまいます。そこで必要なのが、2つ目のディティールのわかる資料です。
人が近くで見るようなオブジェクトは、ディティールを盛る必要があります。そのため、ナットやボルト、固定金具などの寄ったときに見える細かい構造や塗装のムラなどがわかる資料を集める必要があります。オブジェクトの寸法や図面もこの段階で調べておくといいでしょう。
そういったディティールのわかる資料を集めることで、寄ったときにもクオリティの高いオブジェクトにすることができます。
世界観のわかる資料
そして、シルエットとディティールが整ったオブジェクトのクオリティをより上げてくれるのが、3つ目の世界観のわかる資料です。世界観といってもそのオブジェクトが「どこにあるのか・どのような使われ方なのか・どんな人が使っているのか」などのことを指します。そういった状況を知ることで、そのオブジェクトが置かれている説得力を上げることができます。
構図のわかる資料
最後に最も大切とも言っていいのが、4つ目の構図の分かる資料です。どんなに細部を作りこみ、世界観を作りこんでも構図が終わっていたら作品が終わってしまいます。
ワールドに設置したり、アイテムとして出品する場合は見える部分すべてを作る必要があります。しかし、ポートフォリオに載せるような作品は、構図を決めてから見える部分だけを作ることで効率を上げることができます。
作品を見たときの印象も構図の影響が大きいため、写真やイラストを参考にしながら構図についても学んでおく必要があります。
構図には以下のような種類があります。
- 三分割構図
- 二分割構図
- 日の丸構図
- 三角構図
- 逆三角構図
- 対角線構図
- 放射線構図
- 額縁構図(トンネル構図)
- アルファベット構図
- 黄金比
- 白銀比(大和比)etc…
詳しい説明は省くため、気になる場合は是非調べてもらえたらと思います。
資料集めまとめ
資料集めは、作品のクオリティを上げるのに必要不可欠と言っても過言ではありません。僕もまだ何も見ずに作品を作れるほど知識を蓄えられていません。そのため、いつも作品を作るときには必ず資料集めを行っています。
資料集めにはPinterestなどのサイトが役に立ちますが、自分で資料撮りを行うことも大切だと思っています。やはり、写真や動画だけの情報と比べると自分が体験しているという点で資料の質が大きく異なってきます。都会でも田舎でも、外に出ればそこは資料の宝箱です。日々自分が目にしている光景も資料撮りという名目の散歩に出かけることで、新しい見え方に出会えるかもしれません。
特に今回作った「手水舎」のような和風建築物の資料はネットだとあまり見つけられませんでした。図書館に行った方が参考になる資料がたくさん手に入ったりするので、作業に行き詰ったときには散歩に出かけてみることをおすすめします。歩くと腰痛が収まったりもしますから、ついでに資料も得れるなら一石二鳥でしょう。

③モデリング
資料集めが終わったらモデリングに入ります。まずは完成形のイメージを膨らませるために簡単なオブジェクトで大きさと形を決めてあげましょう。
3DCGのクオリティを左右するものに比率があります。人より大きい本や小さい部屋を狙っているわけではないのに錬成してしまってはいけません。そのため、最初にラフを作って大きさと形を決めておきます。

ラフを作ってサイズ感を確かめたら、資料を参考にモディファイヤを活用しながら細部を作りこんでいきます。ここでどれだけ資料を集めることができたかが肝になります。そのため、よく資料を見ながら細部を作りこんでいきましょう。

モデリングまとめ
モデリングはどこまでやるかを決めるのが難しいと思います。Blenderでレンダリングして終わりなのであれば、マシンパワーに身を任せポリゴン数にモノを言わせることも可能です。
しかし、Clusterのワールドに設置したいのであれば、負荷の問題を考えなければなりません。一度2億ポリゴンくらいの傘を設置したらスマホがクラッシュしました😭
また、ワールドクラフトストアで販売したい場合は、5000ポリゴンという制限下でモデリングをしなければなりません。そのため、モデリングを行う際には、目的をはっきりとさせておくことが重要です。
④UV展開
モデリングが終わったら地獄のUV展開に入ります。UV展開には流派があるほど、奥が深いらしいです。今回の手水舎はかなり簡単な形でモディファイヤも適用しなかったため、中央の装飾くらいしかシームを切りませんでした。
UV展開から逃げることは悪いことではありません。気がおかしくなる前にBlenderのスマートUV展開やRizomUVなどのソフトを使用して効率的にやることをおすすめします。
また、ノードを組んでマテリアルを作る場合は、UV展開をしなくても大丈夫な場合があります。テクスチャリングをどうするか考えながら効率的にUV展開を行っていきましょう。

全くシームを切っていないことがわかる(怠慢)。
⑤テクスチャリング
地獄のUV展開が終わったら、マテリアルを作成していきます。今回作成したマテリアルは以下のようになっています。
- 瓦(ノード)
- 岩(ノード)
- 水(ノード)
- 単水栓(ノード)
- 木(テクスチャ)
- コンクリート(テクスチャ)
- 花崗岩(テクスチャ)
ノード
ノードを組んで作成したマテリアルは、瓦・岩・水・単水栓です。
瓦のマテリアルは以下のようになっています。カラーランプとノイズテクスチャで色合いを変化させています。また、バンプにノイズテクスチャをつなげることで表面の凸凹感を作っています。


岩のマテリアルは以下のようになっています。ディスプレイスモディファイヤで岩の形はできているので、瓦と同様のノードを用いて岩のような質感を出しています。


水のマテリアルは以下のようになっています。海洋モディファイヤで波打つ水面の形はできているので、伝播の値を上げて水の反射を表現しています。


単水栓のマテリアルは以下のようになっています。メタリックは0.95程度にし、粗さを0.15程度にすることでリアリティを出しています。


テクスチャ
木・コンクリート・花崗岩のテクスチャは、フリーのテクスチャサイトのものを使わせてもらっています。サイトによって規約が異なるので、使用する際は利用規約をよく確認してください。
ダウンロードしたテクスチャはBlenderのアドオンであるNode Wranglerを用いて適用します。きちんとUV展開が行えていれば、いい感じにテクスチャが適用されるでしょう。


テクスチャリングまとめ
Blenderのノードは結構奥が深く、ノードだけで多種多様なマテリアルを作ることができます。ノードを使っていろいろなマテリアルを作っている方もいるので、是非調べてみてください。
テクスチャはフリーテクスチャサイトでダウンロードしたり、Quixel MixerやSubStance Painterなどのソフトを用いることでノードより直感的にリアルな表現にすることができます。そういったソフトも活用しつつ、満足のいくマテリアルを作っていきましょう。
また、学生でAdobeCCを契約している方は、以下のサイトから申請すると無料でSubStance 3D Collectionを使うことができます。この機会に是非触ってみてください。
clusterにアップロードしてワールドとして制作する場合は、Unity上で別途テクスチャの設定が必要になります
⑥レンダリング
テクスチャリングが終わったらレンダリングに入ります。作った作品がいい感じに映るようにカメラとライトを配置していきます。カメラを設置する際は、構図の資料を参考にするといいでしょう。


いい感じにカメラとライトが配置できたらレンダリングして終わりです。



最後に
作るものを決めるところからレンダリングまでの長丁場でしたが、大体の流れは備忘録として書けたかなと思います。
3DCGはとても根気が必要です。僕はいつもマシンパワーと根気で殴りながら作業しているため、「力こそパワーな3DCGモデリング」と言っています。
この手水舎を作ったときも日中は田んぼを耕しながらコツコツ夜に作業していました。和風の作品は初めてだったので1週間ほどかかってしまいましたが、とてもいい経験になったと思います。