clusterやVRChatなどさまざまなソーシャルVRプラットフォームで活動するショークリエイティブデュオのまとまよさん。
今年8月から本公演が始まった「VRミュージカルwish ~Generalprobe~」は、オリジナル楽曲・脚本や、リアルタイムのダンス、会場演出が組み合わされたバーチャルだからこその表現が試みられたバーチャル演劇です。11月には札幌にある「Deep Tech CORE SAPPORO」でのリアル上映も行われることが決定し、バーチャルからリアルへ活動の幅を広げています。今回は、自分たちで企業の協賛を募るほか、「cluster演劇祭」のような多くの人が関わるイベントを企画し、メタバースのエンターテイメントの表現だけでなく発信し続けるまとまよさんに、「VRミュージカルwish ~Generalprobe~」の内容やリアル上映のイベント開催の経緯、バーチャルでの活動にかける想いについてお話を伺いました。

まとまよ
バーチャルシンガー・おはよう真夜中さん、会場制作/演出を担当する天使まといさんによるショークリエイティブデュオ。
Xアカウント→https://x.com/ohamayo_vr
バーチャルだからこそできる表現を追求するショークリエイティブデュオ・まとまよ
──最初に自己紹介をお願いします。
おはよう真夜中
バーチャルだからこそ表現できるショーを追求し、メタバースでのエンターテインメントが盛り上がる未来をつくるということを目標に活動しているショークリエイティブデュオ・まとまよのおはよう真夜中と天使まといです。
まとまよを結成する前から、私はバーチャルシンガーとして活動していて、まといちゃんと一緒にバーチャルライブの制作をしていました。まといちゃんがワールドや演出をつくって、私がステージに立つ、ということを5年前からやっていたんですけど、今年になって、私たちの活動をもっとちゃんとやっていこうと思い、ショークリエイティブデュオとして正式に結成しました。
結成した理由のひとつとして、clusterで個人であれば収益化がOKになったというのもあるのですが、私はバーチャルだからこそできる表現を追求したいという気持ちがあったのと、まといちゃんはものづくりを通じて観客の皆様を楽しませることがすごく好きだったので、2人でそういう世界を一緒につくっていきたいなと思って、まとまよを結成しました。

VRミュージカルwishを再構成し、お芝居にチャレンジした「ゲネラールプローベ」
──今回お話を伺うきっかけとなった「VRミュージカルwish ~Generalprobe~(以下、ゲネラールプローベ)」について、まずはベースとなった「VRミュージカルwish(以下、wish)」がどういうものなのかから教えてください。
おはよう真夜中
wishは、もともと昨年(2024年)、おはよう真夜中の4周年記念公演として制作されたステージです。4周年ということで、いつも通りバーチャルライブをやっても面白くないなと思い、自分のそれまでの活動や人生を振り返るような、集大成的なものをつくりたいと思ったんです。
私は舞台の脚本を書いた経験がなかったので、最初から最後までストーリーがあるというよりは楽曲の間にモノローグが入って進んでいって、まといちゃんの演出で華やかにする、というようなショーでした。
wish自体は1回きりの公演で終わるつもりだったのですが(トラブルがあったのでリベンジ公演はしました)、今年はまとまよを結成したので、改めてイベントをやろうとなった時に、wishの演出を見直して、ブラッシュアップして開催しようということになったんです。
「wishを再演したいんです」という話を昨年出演してくれた演者の方にしていく中で、まようさダンサーズとして参加していたyamagooさんが、リアル・バーチャルで舞台に関わっていることもあり、「再演するなら違う形でやりませんか」と提案してくれて。それで、ゲネラールプローベのもととなる台本をつくってくれて、ポーンと渡されたんです。
「え!こんなのつくってくれたんだ」と思って読んでみると、すごく良い内容だったので、yamagooさんが考えてくれた脚本で、ぜひやってみたいなと思ったんです。そこから、ゲネラールプローベの制作が始まりました。
一方で、wishを再演したい気持ちもあったので、今年の前半はwishの再演をして、まとまよの活動を宣伝しつつ、ゲネラールプローベの制作を進めました。そして、8月からゲネラールプローベの本公演を順次開催しています。
──なるほど。wishの単なるブラッシュアップではなく、構成自体が変わっているのですね。ゲネラールプローベはどういう内容なのでしょうか。
おはよう真夜中
ゲネラールプローベはwishの前日譚となるお話です。wishは、先程言ったように私が歌ってモノローグで喋る、という風に、ダンサーさんはいるものの私一人が主軸としてずっと出演するショーでした。
一方で、ゲネラールプローベでは、新たなキャストとして黒井有利さん(「ましろ小劇場バーチャル演劇研究会」に所属するVTuber)が演じる不眠少女というキャラクターが登場し、会話劇が行われて、より舞台感の強い作品になっています。
──そもそも今回脚本・演出を担当されたyamagooさんとはどのように出会われたのでしょうか?
おはよう真夜中
「Leben」という曲をつくった時にミュージックビデオもつくろうということになって、その映像をclusterで撮ることになったんです。その時に私は、コンテンポラリーダンスをしている人がいる映像を撮りたいなあと思って、ダンスをしてくれる人をXで募集したんです。
そしたら、yamagooさんと、ゲネラールプローベにも出演していただいてるEnderYearさんが名乗りを挙げてくれました。2人はもともと知り合いだったそうなので、2人とも出演してもらおうとなってミュージックビデオを制作しました。それが2023年のことで、そこからのお付き合いですね。
──なるほど。wishだけではなく、それ以前からの繋がりもあるのですね。
ゲネラルプローペのこだわりのポイントはどういうところでしょうか?
おはよう真夜中
もともと私たちはバーチャルライブをやっていたのですが、今回はライブだけではなくお芝居の面での表現に新しく挑戦しています。そういうチャレンジの部分を皆さんに見てもらって楽しんでもらえたら良いなと思っています。
例えば「まようさちゃん」という、もともとはおはよう真夜中のファンアバターだったキャラクターが登場人物として喋ったり、まようさちゃんに自我があって個性を持ってキャラクター性が出ているところは面白いかなと思います。また、今までは私自身がお芝居を満足にできていたわけではなかったので、お芝居に力を入れているところにも注目してほしいですね。
あと、新曲も書き下ろしてもらっています。しかも、今回はひとりで歌うのではなくデュエットで歌うところもあって、そういう新しい試みをしているところに注目してもらいたいですね。
まといちゃん的にはどう?
天使まとい
私的にはストーリーが良いので、その部分に注目してもらえたらいいなと思っています。不眠少女という夜眠れない女の子が出てくるんですけど、その子とまようさちゃんとの関係とか、その少女がどういう心の変化を経てラストに向かっていくのか、とか。
私が担当した演出面では、不眠少女の心の変化を表せてたら良いなと思っているんですけど。細かいこだわりを色々と散りばめたりしているので、舞台装置含めて細かい部分にまで注目して、何度も通って見てもらえると良いなと思っています。


バーチャル空間は「想像を叶えられる場所」
──まとまよは「バーチャルだからこその表現」を追求しているショークリエイティブデュオということですが、バーチャル空間で表現することにどのような魅力や可能性を感じているのでしょうか?
おはよう真夜中
自分がやりたいと思うことは、現実世界で同じことをやろうとしたら膨大な費用がかかったり、すごい装置が必要になると思うんですけど、バーチャル空間であれば割と手軽にできるところに可能性があると思っています。もちろん、それはまといちゃんが色々な技術を持っているからできることではありますが。
天使まとい
私は、リアルにあるものをそのまま再現したいのではなくて、自分の中にある想像のものをそのまま形にしたいと思っているので、なるべく正確な情報みたいなものを入れないで制作することが多くて。リアルすぎずファンタジーすぎない、中間くらいのものをつくりたいと思っていて、それをつくりたいし、つくることができる場所だと思ってますね。
──clusterに入る前からそのような表現をつくりたいと思っていたのか、clusterのようなバーチャル空間で活動を始めてからそのような表現をつくりたいと思い始めたのか、というところはいかがでしょうか?
おはよう真夜中
私はclusterを知ったからやろうと思った派ですね。
もともと「REALITY」というアバターで配信ができるアプリで活動していて、REALITYとclusterが連携したタイミングでclusterを知って入ってきたんですけど、そこでREALITYでも知っていた杏仁しずくさんというバーチャルタレントの方がclusterでライブをすると知って見に行ったら、なんかもうすごくて。
当時はデスクトップPCしか持ってなかったのでデスクトップPCで見ていたのですが、色々なパーティクルが出たりしてものすごく臨場感を感じて「こんなことができるのか」とすごく衝撃を受けて「自分もやりたい」と思ったんです。そこから、Meta Quest2を買って、活動を始めていったんです。
cluster等で色々なものを見て、本当に色々なことができるんだなというのを知っていく中で、私が思い描く世界がこの場所で繰り広げることができるというのが分かってきてすごく面白いなと思いました。だって、一個人のアマチュアが、普通だったら、こんな広い劇場でショーなんかできないですよね。でもバーチャルだったら、自分が立ちたいステージをつくり放題ですから(笑)
自分の夢というか、想像を叶えられる場所だなと思います。
天使まとい
私は昔から何かをつくるのが好きで、暇さえあれば何かをつくっている子どもでした。なので当時は、将来は家具職人になりたいと思っていて、その後はプログラマー・ゲームクリエイターになりたいとか色々な夢はあったんですけど、そんなことは忘れてしまって、普通に働き始めたんです。それがコロナ禍あたりの時期にcluster入ってきた時にGAMEJAMというイベントがあることを知って、友達と参加してみたら面白いんじゃないかと思って、参加したきっかけでclusterでワールドをつくるようになったんです。
実はそれまでは「自分が何かをつくるのが好き」ということに気づいてなくて。
clusterで色々制作して、つくることに没頭していることに気づき、「ああ、自分ってものをつくるのが好きだったんだな」と、最近気づいたばっかりなんです。
まよちゃんに声をかけてもらってから、色々なものをつくったり挑戦するようになって、世界が広がっていきました。今はすごく楽しんで活動しています。

バーチャルやアバターが世界を広げてくれた
──clusterのようなバーチャル空間で活動するメリットはどのように考えられていますか?
おはよう真夜中
バーチャルからシンガー活動を始めたこともあり「アバターで活動する」ということ自体は最初からなので自然な流れでした。
ただ、私は自分に自信があまりなかったり、ぶっちゃけ引きこもりだったこともあって、リアルだと普段は全然喋れないんですけど、アバターを着ることによってベラベラ喋れるようになるんですよね。なんていうのかな、キャラクターになるというか。アバターを着ることによって、自分が普段はできないことをできるようになる感覚があります。
すごい人数の前で一人で歌うとか、現実世界では難しいと思うんですけど、アバターを着てバーチャル世界の中に入ることによってできるようになっているんです。
そうやってバーチャルやアバターによって可能になることってすごくたくさんあるので、同じような人に、こういう世界をもっと知ってもらいたいですね。活躍はしなくてもいいかもしれないんですけど、自分をさらけ出せる場所があるんだよってことを。
あまり上手く伝えられてないかもしれないんですけど、私はバーチャルやアバターの存在によってすごく助かっているので、そういうことを皆に伝えたいと思って、活動しています。
天使まとい
ちょっと似たような話なんですけど、先程コロナ禍の時にclusterに入ってきたという話をしましたが、その頃、人と話すのが嫌になっちゃった時期があって。ほとんど家から出ずに引きこもりみたいな感じだったんです。その頃はclusterでも無言勢(ボイスチャットなどを使用せずに他の人とやりとりする人たちの呼び方)で、みんなとのやりとりもまよちゃん経由でやってもらうくらい、人と関わろうとしていなかったんです。
そういう引きこもりでもイベントに関わらせてもらって、間接的にでも色々な人と関わることで徐々に気持ちも変わってきて、今ではまた普通に話せるようになって、脱引きこもりもしたんです。だから、アバターで、外に出なくても、人と関われる場所があることで救われたなと思っています。

リアルとバーチャルを繋げる挑戦と難しさ
──リアルでの同時上映イベントはどういう経緯で開催されることになったのでしょうか?
天使まとい
まとまよの活動として「VRミュージカルをより多くの人に広めて、持続可能な活動にしたい」という目標があります。そこで、より多くの人に届けるためにはどうしたらいいのかを2人で話し合っていく中で「外の人にPRしていこう」というアイデアが出たんです。ただ、色々な人や場所に片っ端DMを送ったりしていたんですけど、あまり手応えがなくて。
その時に、yamagooさんに「外に広めたいんですけどなかなか難しいんですよね」という話をしたら、yamagooさんが繋がりがあった「Deep Tech CORE SAPPORO」さんという札幌のコワーキングスペースの方を紹介していただいて。
「VRやメタバースを知らない外の人にも分かりやすいイベントを開催したい」という思いが伝わり、今回のようなリアルでの同時上映イベントを開催することになりました。
──人と話すのが嫌な時期もあったとおっしゃっていたところからは打って変わって、すごい行動力ですね……
リアルでもイベントすることになり、バーチャルでのイベントとの違いや難しさを感じている部分はありますか?
天使まとい
外に向けて発信することの難しさの壁にぶち当たっていますね。色々なところにお声がけはしているんですけど、返事待ちの状態のところが多くて……(2025年9月29日のインタビュー時)
宣伝方法もこれまでのメタバースの人向けのものとは勝手が違っていて、苦戦していますね。
おはよう真夜中
「メタバースって何?」みたいな人たちもまだまだたくさんいる中で、そういう人たちにこそ見てもらいたい・体験してもらいたいと思っているので、私たちのようなVRで活動している人が分かる動画ではなくて、その人たちにとって分かりやすく・魅力的に宣伝していくのはやっぱり難しいですね。
──外の人にアプローチしてみて手応えはいかがでしょうか?
天使まとい
やっぱり、バーチャルとか知らなくてリアルしか知らない人に声をかけるのは怖いというか、メタバースの中の声のかけやすさみたいなのがないので、かなりドキドキしますね。
おはよう真夜中
そんな中で、ちょっとずつ助言をいただいたり、プロジェクトが上手くいくために一緒にやっていこうと手伝ってくれる方が出てきていたりするので、色々な人に「こんなことをやっています。成功させたいんです。」と言っていくことって、すごく大事なことなのかなと思いました。
天使まとい
そういう風に声をかけたことによって、色々な人が協力してくれるようになるので、巻き込んで大きくしていくのが大事なのかなと思いますね。
──リアルのイベントで期待されていることはありますか?
おはよう真夜中
会場が先進的な場所だと思うので、そういう会場の大きなスクリーンで私たちのステージを見てもらえるというのは新しい試みなので、やっぱり嬉しいなと思います。
それをきっかけにして、clusterに来る人が増えたり、私たちの公演を目当てに来てくれる人が増えたら嬉しいなと思っています。

バーチャルライブ・演劇がエンターテイメントの当たり前になる未来へ
──バーチャルライブやバーチャル演劇などのショーが広まっていくために必要なことや課題についてはどのように考えられていますか?
おはよう真夜中
もともとはやりたいことをやって見てもらえたら良い、というところから始まったんですけど、「興行として成り立たせたい」「外の人に知ってもらいたい」と考えた時に、今回壁にぶち当たったことで、なんだかんだ言って、人脈が必要だなあと感じました。もともとコミュニケーションが苦手なところがあるので、そこがすごく難しいんですけど。
──バーチャルイベントの未来像はどのように考えられていますか?
おはよう真夜中
今より、もっと楽しいコンテンツがもっとたくさん増えたら良いなあと思いますし、現実で舞台やライブをやっている人たちが、バーチャルでの公演を選択肢として選んでもらえるような場所になっていたら、すごく良いのかなと思います。
私たちからするとハードルは感じないのですが、VRに触れたことのないはじめての方にとっては、今はまだバーチャルでの公演はもしかしたらハードルを感じるかもしれません。そういうハードルが低くなって、色々な方が気軽に公演するようになって、面白いものがたくさん見れる世界になると嬉しいなあと思います。
天使まとい
VRやメタバースのコンテンツが世間一般としてもっと身近なものになればいいなと思っています。この前、協賛のお話を20・30代くらいの飲食店の方にさせていただいたことがあったんですけど、その時に「メタバースやVTuberって聞いたことはあるけど、よく分からない」とおっしゃられていたんです。説明はしたもののあまりピンときていない感じで、やっぱりもっと浸透していかないとなあと思いました。
そういう面での課題もあるなと思ったと同時に、メタバースでは素晴らしいコンテンツがたくさんあるので、一般の人も、そういうものをエンタメの選択肢として当たり前になるように身近なものになったらいいなと思いますし、そうしていきたいなと思っています。
──最後に、まとまよのこれからの展望について教えてください。
おはよう真夜中
2026年3月を目途に新公演を開幕できるように準備中です。
これからも自分がつくりたい世界をまといちゃんと一緒につくっていって、よりたくさんの人に見てもらえるように、色々なかたちでの広報だったり、交流を頑張っていきたいなと思っています。
天使まとい
私は、まよちゃんがやりたいことを、たくさんの人に見てもらえるコンテンツになるように、制作の方で頑張っていきたいですね。お客さんに楽しんでもらえる表現を私なりに追求していきたいと思っています。
──今日は、色々とお話いただきありがとうございました!
(2025年9月29日収録)

「VRミュージカルwish ~Generalprobe~」の次の本公演が11/7(金)22:00から開演されるので、記事を読んで興味を持った方はぜひ行ってみてください。
▼イベントページは下記
https://cluster.mu/e/bde11fe8-d708-44e7-a6b6-e163d62e8740
また、インタビュー内で紹介したリアルでの同時上映公演は、北海道札幌市「DeepTech-CORE SAPPORO」で11/29 17:00から開演予定で、チケット販売中です。
▼詳細ページは下記
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02c3h9tgf8n41.html






















