2026年4月22日から新しく始まった月1回のcluster公式イベント「Cluster Station for クリエイター」。
clusterでものづくりをするクリエイターに特化した内容をお届けするイベントです(イベント情報はこちらのアカウントページから)。イベント内ではクラスター社のCGクリエイターの方たちが役立つ知識を発信していきます。
6月22日のイベントでは、テレビ業界でのCG制作を経てクラスターに入社し、青山学院大学バーチャルキャンパス等の制作を担当したCGクリエイター・じゅんこさんが登場。

今回はこのイベント後の7/7にお披露目された新しいクラスターステーション会場の体験設計と軽量化のTipsについて解説しました。本記事では、イベントの内容を前後編の記事としてまとめていきます。前編では体験設計について紹介します。
デザインに絶対の正解はありません。今回の内容はあくまでひとつの事例ですので、皆さんがワールド制作する際のアイデア探しの目線で読んでみてください!
制作する前の重要なポイント
デザインコンセプト「ステーション」の3つの意味
ワールドを制作する際、多くの方は「どういう場所にしたいか」というコンセプトから考え始めると思います。今回の新会場制作では「クラスターステーション」という名前に注目してコンセプトを固めていきました。
「ステーション」という言葉について調べてみると、大きく3つの意味が見えてきました。これらを会場のコンセプトやデザインへ落とし込んでいます。

こうして導き出したコンセプトをもとにして、新会場では「駅」「情報」「交流」という3つの意味を融合させた空間としてデザインしています。
このようにワールドの名前やキーワードの意味を深掘りしてデザインの指針にするのは世界観の説得力を持たせるにあたっておすすめの方法です。
リファレンス収集の重要性
空間のデザインを考える際には、どれだけ参考画像やリファレンスを集められるかが重要になります。例えば、今回の会場の通路のポスターやフォトスポットのデザインは現実の駅の構内にある広告やキャラクターコラボの装飾を参考にしています。
皆さんもワールドをつくる際、まずは自分がつくりたいイメージに近い画像やデザインをたくさん集めることからスタートするのがおすすめです。特に現実のテーマパークや商業施設は空間づくりの工夫がたくさん詰まっているので、とても参考になると思います。
「ワクワクする空間」をつくるデザイン手法
スポーン位置の体験設計
ここからは具体的な空間デザインについて解説していきます。
まずはスポーン位置について。スポーン位置とはワールドに入った際に最初に降り立つ位置です。スポーン位置をどこにするかは体験設計を考える上で重要なポイントとなります。
旧会場と新会場の空間のレイアウトを比較してみましょう(下図)。

旧会場はワールドに入ってすぐ目の前がメインステージになっています。これは移動の効率を重視したつくりになっていると言えます。一方で、新会場ではあえてスポーン位置からメインステージまでの距離を確保しています。このレイアウトは、会場に入ってきた方たちに歩いてもらうことで、目的地に向かう道中の期待感をじわじわと膨らませてもらうことを意図しています。
このように意図によってスポーン位置を変えることで体験設計を行うことができます。もちろん利便性とのトレードオフはあるので、自分のワールドではどのような体験をしてもらいたいかを考えて検討してみてください。
通路の構造:直線 vs 曲がり角
先に述べたように新会場はメインステージまで歩いてもらうことを前提にデザインしています。その際に、歩いてもらう距離をただ長くすれば良いわけではありません。歩くのが単調な体験になっていたら歩くのが億劫になってしまいますよね。
そこで今回は「モック」と呼ばれる仮組みの空間(下図)をいくつかつくって、どのような距離感や構造が歩いた時に一番ワクワクするかを検証しました。
最初に検証したのが「短い直線の通路」です。
この構造だとワールドに入った瞬間から奥のメインステージが見えている状態になってしまいます。そうなると「この先には一体何があるんだろう」というワクワク感が削がれてしまうという課題が見えてきました。

そこで最終的に採用したのが「曲がり角がある通路」です。
あえて曲がり角を設けることで奥のメインステージまでの視線を遮り、「この角の先には何があるんだろう」とワクワクを感じることができるようにしています。
さらに通路が折れ曲がることで壁の面積が増え、ポスターや案内板等の情報を配置しやすくなるというメリットも生まれました。

階段の心理的効果(上り vs 下り)
通路の途中にある階段も体験設計しています。
階段がもたらす心理的効果について調べてみた結果、人が階段を上る時は先への期待感がじわじわと高まっていく一方、下に降りる時は秘密基地に入っていくような独特の没入感が生まれることが分かったので、この知見を活用しました。

新会場は「ワクワク感」が一番大事だったので上り階段を採用しています。もし隠れ家やバーみたいな会場であれば下り階段の方が良いかもしれません。
そのようにつくりたい空間の目的に合わせて階段の向きを使い分けるだけでもワールドの世界観の深まりをつくることができます。

空間のメリハリ:狭い門から開けたステージへ
さらに階段を上った先には門を設置しています。あえて狭い門を一回通ってから一気に開けたメインステージに出るように設計しています。このように空間のメリハリをつくることで、メインステージにたどり着いた瞬間のワクワク感をさらに引き上げるようにしています。
ワールドの中で一番魅せたい場所を印象的に際立たせるための手法なので、皆さんもぜひ試してみてください。

楽しむきっかけをつくる
通路をインフォメーションとして活用する
曲がり角によって増えた壁を有効活用するための方法も検討し、「通路をインフォメーションにする」という工夫をしました。
本来、移動のための通路は単調になりがちです。一方で新会場では、通路を「clusterについての様々な情報を少しずつインプットできる場所」に変化させ、目的地への期待感をさらに高める空間にすることができました。

フォトスポットによるユーザー交流の促進
さらにインフォメーションのための場だけではなく、訪れた人が楽しめるフォトスポットも用意しています。フォトスポットのように寄り道ができる場所を用意することで「一緒に写真を撮ろう」とユーザー同士の交流を自然に生むきっかけをつくることができ、移動そのものをエンタメにできます。謎解きを用意するのもありですね。
そうしたスポットがあると体験の満足度がぐっと上がるので、ぜひ皆さんも広いワールドをつくる時には検討してみてください。

配信映えを意識したメインステージのデザイン
メインステージの広告設計
最後にメインステージのデザインについて解説します。
新会場のメインステージでは、ユーザーの皆さんのワールドをしっかり宣伝したいという大きな目的がありました。そのためメインステージの周囲にはかなりの数の広告枠を確保しています。
さらにこれらの広告がYouTubeの配信にも効果的に映り込むように、モックの段階から映り方を意識して設計を進めていきました。
3D空間の場合、配信用のカメラの位置や角度が少し変わるだけで配置した広告が見切れてしまう、ということが起こりやすいです。そのため今回は、配信を担当するカメラマンと一緒に配信用のカメラワークから逆算して会場レイアウトを行いました。

検討の末に採用したのが「演者さんのすぐ真後ろに広告枠を置く」レイアウトです。こうすると演者さんを見るだけで自然と広告が目に入るようになります。配信では複数のカメラの位置を切り替えて映像を撮影しますが、どの位置であっても配信映像内に広告が綺麗に収まるようなレイアウトになっています。


広告枠の回転による均等露出
さらに広告の見せ方で工夫したのが「広告枠の回転」です。
壁や看板に広告を貼るだけだと、視認性の高い場所と、死角や影で見えにくい場所が生まれてしまいます。そこで今回は広告枠自体がゆっくり回転する仕組みを取り入れることで、すべての広告が均等に良い場所に露出する機会を得ることができるようにしています。この工夫により、すべての広告を偏りなくアピールすることができます。

この広告枠では、クラスターステーション内で紹介するワールドを掲載する予定です。会場に遊びにきた際や配信を見る時は「今日はどんなワールドが飾られているか」という部分に注目して見ていただけると嬉しいです。






















