バーチャルイベントは人生を豊かにしてくれる|「食」を題材にしたアバターマーケット「満漢全席2」主催のみっつ さんインタビュー

「食」を題材にしたアバターマーケット「満漢全席2」。

2024年9月に第一回が開催され、50名以上のクリエイターが参加し、来場者は延べ1,400名以上、出展物の総販売数は600点超と好評を博したイベントの第二弾が2025年11月に開催されました。

第二回は「未知の食卓」をテーマに。第一回よりパワーアップし、前回同様の盛り上がりを見せました。
このイベントの特徴はclusterのクリエイターさんによって企画され、収支も見据えて運営されている点にあります。また、協賛の募集など新しい試みも見られた「満漢全席2」について、主催のみっつさんに開催の経緯や想いを伺いました。

みっつ さん
clusterではワールド制作やイベント運営、ライブ演出などをしています。個人制作でも共同制作でも、後から振り返った時に「あれ最高だったよね」と言えるような心に残る時間を作りたいと思っています。

プロフィールページ→https://x.com/Mittsujp

──最初に自己紹介をお願いします。

みっつと申します。clusterは2020年末頃に始めました。
色々なワールドを制作していますが、最近はイベントを運営している人として認識されることが多いのかなと思います。
楽しい時間や綺麗なものが好きな一ユーザーとして、日々clusterで過ごしています。

──clusterで活動を始められた当初は、化学式のワールドを公開されていた覚えがあります。もともと専門とされている分野を展開して活動しているような印象だったのですが、当時から現在の活動に至るまでの経緯も聞いてもいいでしょうか。

そうですね。最初は、自分の専門分野も活かして面白いことができるのではと思ってclusterを使い始めました。
大学の時は化学の研究をしていたのですが、ラボに入った時、先生や先輩が共通のイメージを思い描きながら、すごく抽象的な議論をしているんです。最初は、その感覚が身につくまでまったく訳が分からなかったのですが、一度イメージを共有できれば、抽象的な概念であってもみんなで同じ認識を持つことが可能となると分かりました。

こうした一見ピンとこないイメージを可視化し、人に分かりやすく伝える方法はないかと思っていた時に、たまたまMeta Quest2(当時はOculus Quest2)に出会って、試してみると「これは良いぞ!」と思って、「VRを使えば化学式を大きくして上に登ったりできるってこと?」などと色々なアイデアが浮かんできたんです。clusterはつくったものをスマートフォンでもいろいろな人に届けられるという特徴があったので、ここでワールドをつくり始めました。

入口はそのような流れでしたが、さまざまな創作を続けるうちにハマってしまって、clusterは自分が普段考えていることや見たいもの、現実にはないような場所、ストーリーを表現する場として面白いぞと思うようになったんです。しかも、それを他の人と一緒に見たり、交流したりできる。そうした創作と交流の往復ができるのはすごいことだと思っていて、イベント企画などの現在の活動へもつながっています。

──お話を聞くと、今回のイベントの「未知の食材」というテーマを含め、普通であれば共有しづらいものを共有できるプラットフォームとしてclusterを利用しているように見えるのが面白いですね。

振り返るとそうですね。
普段も「伝わりづらいものを可視化する」という仕事に関わることが多く、「分かりにくいものを分かりやすく」「みんなで見る」は、個人的にすごく興味があって、それを実践する場としてもclusterを使っているんだと思います。

──今回主催されたバーチャル満漢全席2の概要を教えてください。

「食」をテーマにしたアバターマーケットの第二弾です。

clusterでは、ワールド・イベント内でアバターやアクセサリーを購入し、姿や装いをその場で変えることができる機能を提供しています。その機能を活かしたアバター・アクセサリー即売会イベントが数多く開催されている。
このレポート動画では、数々のユニークなアバター・アクセサリーを紹介。

人間が生きていく上で「食」は、あらゆる人にとって共通の関心があるテーマです。だからこそ共感を呼びやすい形式のアバターマーケットになったと考えています。それとやっぱり、食べ物のアバターを身にまとうのは不思議で面白いですよね!(笑)

──2024年に第一回を開催して2025年も継続して開催するに至った経緯を教えてください。

第一回のイベントが非常に楽しかったことが最大の理由です。自分も楽しかったですし、周りで楽しかったと言ってる人もたくさんいて。なので、さらに進化したイベントをもう一度やってみたいなと思い、2回目の開催を決めました。

また、1回目でやりきれなかったことがあったという理由もあります。
1回目はアバター販売機能が実装されたタイミングにあわせて、より早く実施するために機能実装の翌月に開催しました。準備期間が一ヶ月ととても短く、できないことが結構ありました。具体的には、協賛を募ることができなかったですし、会場制作の面でも本当は今回のようにオリジナルテクスチャをつくるなどこだわりたい部分が多くありました。今回は準備期間が充分あったため、やりたいことを全部盛り込めたので良かったです。

第一回の様子(2点写真提供:みっつ さん)

──第二回のイベントを終えてみて、気づきはありましたか。

「やって良かった」と心から思っています。
すごく楽しかったし、イベントの途中でふと「自分はみんなからいただいてばかりだな」と感傷的な気持ちになりました。それは、さまざまな関係者が素敵な時間を見せてくれたということなのかなと。 

イベントは刹那的なものだと思われるかもしれませんが、同じ時間・空間を、同じ熱量で共有したことは深く記憶が残ると思いますし、それは関わった人たちのその後の生活や人生を豊かにしてくれるのだという確かな実感がありました。

──イベントという限られた時間だからこそ強い印象が残るということですね。

今年は企画のボリュームを多めに組み、タイムスケジュールが詰まったものにしました。それは、その場に色々な人が集まって、同じものを見て、同じ熱量で楽しむような1日を過ごしたいと思っていたからです。振り返ってみると、そういう企画の力によって自分が思い描いていた場をつくることができたのではないかと思っています。

コメント数フィード数合計滞在時間[分]平均滞在時間[分]
350357851,820106
今回のイベントのデータ。平均滞在時間は第一回から伸びて100分超えと、来場した人たちが長時間楽しんでいたことが分かる。また、フィード数は500超え、コメント数は3500超えと、活発なコミュニケーションが行われ、熱量の高いイベントとなっていたことが伺える。
イベント中の様子(写真提供:みっつ さん)

──みっつさんはさまざまなバーチャルイベントを企画されています。みっつさんが思うバーチャルイベントの魅力について教えてください。

この点はもう語り尽くされているとは思うのですが、やっぱり世界各地から同じ空間に参加できるのはすごく意味があるし、面白いと思っています。

今回のイベントでも、みんなが食卓の上に並んでワイワイ盛り上がっていたわけなのですが、そこで、リアルの年齢・性別・国籍も分からないような人たちが画面の向こうでは同じようにお腹を空かせていたり同じ感情になっていたりすることも起こっているわけで、それはすごく魅力的な状況ですよね。

──色々な人が同時に体験できる魅力は盛んに語られている一方で、その魅力がまだ広く伝わって届いてない印象もあります。なので、実際に活動している方がその魅力を各々に話すのは重要だと思っています。

この魅力はもっともっと広まってほしいですね・・・!一方で、じゃあ集まるだけでいいのかというとそうでもないなとも感じていて、そこにちゃんと人の思いや熱量があることはバーチャルでの体験においてすごく大事だなと思っています。

そういう場で色々な人が同時に同じ時間を味わうということの魅力や、この世界にはそういう場が沢山あるということがたくさん知られてほしいと願っています。

バーチャル空間で熱を帯びた素敵な時間を過ごすことは、それを経験した人の生活や人生を豊かにしてくれるという実感がありますし、自分が運営するイベントではそういう時間を提供できるようにしたいと思っています。

──なるほど。みっつさんのイベントへ掛ける思いの強さが分かりますね。clusterを始める前にイベントを主催されたことなどはあったのでしょうか。

clusterに来る前、イベントを主催する経験はほとんどありませんでした。
clusterを始めてサイエンスコミュニケーションみたいな小さなイベントを定期的に開催したり、大学時代のサークル仲間と音楽イベントをやってみたり、そういうことをやっているうちに色々なイベントに挑戦してきたという経緯があります。

小さなことからちょっとずつ試したので「意外とできるじゃん」とか「なかなかうまくいかないな」という時期もあったのですが、そういうステップアップをできるのはバーチャルならではの特徴・魅力だと思います。

──バーチャルの良さとして「小さく始めることができる」はあると思います。リアルと比べて失敗してもダメージが少ないというか……

そうですね。ただ、小さいから失敗してもいいというわけではなく、参加者が少なかったとしても、「この人に届けたいな」と思える人をちゃんと想像して、その人に届けるためにどういう工夫をしたらいいか、という考え方をすることが大事だと思っています。だから本当は規模が大きいか小さいかは関係ないんですよね。

そうした企画をどこでも、誰に対してでもできるというのはすごく魅力的だと思います。そして、clusterではチャレンジしやすいような環境が整えられているので、その中でトライアンドエラーができることは重要ですね。

──長い時間をバーチャル空間を過ごしているみっつさんから見た、バーチャル空間の将来性について教えてください。

「こういうことが起こったら面白いな」と思っていることがあります。

それは「思いがけない遭遇」ですね。
リアルで例えると、どこかに旅行に行った時に「夜ご飯を食べるまで時間があるから宿の近くを歩いてみたら、面白そうな催しを見つけた」というような経験です。そういう出会いは今のclusterでは発生しづらいなと思っていて。

例えば、ワールド同士がシームレスに繋がれば、「あっちに行ってみたらこんなワールドに辿り着いた」とか「あっちに向かって歩いている人についていったら開催中のイベントに遭遇した」とか、そういう偶然性が生まれる世界になると思うんです。そうなると、また一段と面白くなるのではないかなと。

みっつさんは過去にワールド紹介をしてくれるAIを実装したワールドも公開している

──なるほど。興味深い視点ですね。そういう風に考えられるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

clusterを始める前から旅行に行くのがすごく好きだったので、clusterで色々な経験をする中で自分が好きなものをもっとメタバースの中で経験できるようにするためには何が足りないんだろうか、と考えた時に「思いがけない遭遇」という考えに至ったんです。

現状は、それは「人」に依っているのではないかと思います。「たまたま同じワールドにいた人が面白かった」とか「イベントに行ったら久しぶりにあの人に会えた」とか。そういう風に、人が思いがけない遭遇の大きな要素になっていますが、ワールド・イベントがもっと無作為に接続されるようなことが起これば、そういう要素をワールドやイベントも持つことができて、より面白い世界になるのではないかと思います。

──極端なことを言えば、そこに人がいなくても、そのワールド・イベントに出会うことで、人生を豊かにするような経験ができる、と。

そうですね。今は「ワールド・イベントを自分で選んでそこに行く」というどこか設計された意図を感じてしまいます。もっとランダムに巡ることができたら面白いなと。

──バーチャル満漢全席2では、協賛やVIP席に行けるアクセサリーなど、第一回より収益面に力を入れられているように感じました。その理由について教えてください。

2023年頃から運営に関わっている「バーチャル学会」の影響がすごく大きいですね。
私が関わる以前から、色々な組織から協賛を受けて運営されているイベントなのですが、運営に入って「バーチャル学会というものの価値を認めて、この会の継続と発展を願ってみんなが協賛をしているし、運営もその気持ちを受け取ってコミュニティに還元している」という気持ちの循環がとても素晴らしいなと感じました。

協賛という仕組みも使いながら、バーチャル世界やコミュニティをより豊かにしていくという明確なビジョンを持って運営されている姿を見て、これはイベントのあるべきひとつの姿だなと思って、個人的にすごく影響を受けています。
事実、バーチャル学会では、自分が主催するイベントよりもはるかに大きい規模での収支があって経済が動いています。やっぱりバーチャルの世界で何かつくったり、活動したりすることで対価が発生するコミュニティがあることはすごく大事ですし、回り回って色々な場所を豊かにしていくのではないかと思うんです。

会場には協賛をした企業や個人のポスター展示も

──なるほど。

バーチャル満漢全席2に関しては運営や出演者の方たちに協力をお願いする時点で「これくらいの謝礼はお渡しします」と言って協力してもらっています。
対価が発生することが絶対必要だとは言い切りはしないのですが、僕個人の考え方として、これだけ協力してもらっているのに何もお返しできないのも違和感があると思っていて、そのために謝礼やそれに相当するお返しをできるのが重要だと思っています。

それを考えると色々な方や組織に、このイベントに価値を感じて協賛いただいて、そこでいただいたものを自分の気持ちとして色々な人に渡していくというのは、自分としてはすっきりする感覚があります。半ば押し付けになっている面もあるかもしれないのですが。「これで美味しいもの食べてください」って(笑)
今回は謝礼に加えて協賛品としていただいた物品やクーポン券なども添えてお礼を渡せたのがとてもうれしかったです。みなさま喜んでくださっているようでした。

──対価があることによって責任もしっかり生まれそうですね。

もちろん熱量のある方はそういうものがなくても責任を持ってやってくれると思っています。でも運営側としては、その人が「謝礼はいらない」と言っても、少なくともなにかしらの形でお礼を渡したい気持ちがある。
そういう時に「運営の皆さんの分も」と言って協賛品を提供してくださる企業の担当の方などはとてもありがたかったです。この感謝は自分だけの気持ちではないんだと伝わるような気がして。

金銭や物品に限らず、こういう気持ちを伝えるために協賛という仕組みを活用するような動きはこれからも増えて欲しいなと思っています。

──協賛の仕組みを取り入れてみて、気づいたことがあれば教えてください。

「みんな喜んでくれるんだな」という気づきがまずありました。「協賛いただきました」と言うと、「イベントをビジネスにしはじめた」というように思われる可能性もあると思っていたのですが、意外とみんな「協賛すごい!」みたいな反応をしてくれる。しかも、協賛してくれた方や企業にちゃんと興味をもってくれて商品が気になるとか買ってみたと言ってくれる人もいて。

私は「自分たちが暮らしているバーチャル世界やイベントを面白いと思ってくれたから協賛してくれた」と捉えていて、そんな風に思っていただいたことに対する恩というか喜びは忘れられないなと感じています。

協賛はシステムではありますが、担当者の方と直接やりとりしていると、その人たちはそれぞれ思いを持って協賛してくれているんだなと感じますし、その事実は大事だと思います。
イベントを企業としてちゃんと盛り上げていきたいとか、個人として協賛してくれた方も応援の気持ちで盛り上がって欲しいと思ってくれている。お金や物品で、その表明をしてくれていることにはすごく価値があると思います。

──協賛が、ある意味コミュニケーションのひとつの方法になっているということですね。

そうですね。みなさますごくそう感じてくれているみたいです。実際にイベント中に会場に担当者の方がいらっしゃって、来場者と談笑している場面も何度か見かけました。

──「協賛」というとドライなイメージがあるのですが、そこにはすごくウェットな思いとかコミュニケーションがあるというのは面白いですね。

──最後に今後の活動の展望があれば教えてください。

この世界の楽しさや魅力をもっと伝えたり、見つけたりすることにつながる活動をしていきたいなと思っています。
まだまだ「こんなことやったら面白いじゃん」と誰も気づいていない、知らないことってたくさんあると思うので、そういうものを見つけていきたいですね。

──一クリエイターとして活躍したいというよりは周りを巻き込んで活動されているのがみっつさんの特徴なのかなと聞いていました。それは「伝えたい」という思いに現れているんだなと感じました。今日はありがとうございました!
(2025年12月19日収録)

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